お客様が塗装工事を依頼するにあたって注意すべき事
誠実な塗装業者を見つけることは非常に困難です。この記事では誠実さ、価格、品質保証に注目して具体的な検討方法について記述するとともに、見積書の不明点を質問するときの方法についても説明します。
塗装工事の相見積もり
塗装工事を依頼する際に塗装業者から見積書を提出してもらうことになります。塗装工事の見積書は複雑で専門用語の並ぶものですので、一般のお客様には分かりづらい部分が多いとは思います。精査をせずに、相手が良心的な良い業者であることを期待しておまかせしますと丸投げをしてしまうと、高い金額を払うことになったり、不良施工に結びついたりしてしまいます。そのような事態を防ぐためには、お客様自身で見積内容をよく精査することが必要です。
しかし、一社だけの見積書を見てもよく分かりません。ぜひ複数社から見積もりをとって相見積もりをしてみてください。そうして各社の見積書を比較検討すると、会社ごとの工事に対する考え方や塗装工事の技術力が見えてきます。
ここで注目するべき点は、誠実さ、価格、品質保証の長さです。それぞれ見ていきましょう。
不誠実な内容
塗装業者を選ぶ際に誠実さというのは大切な要素になります。残念ながら塗装業界は悪徳業者が多い業界とされ、施工後のクレームも多いと言われています。これは塗装業者が手抜き工事をして逃げてしまうことが多いからです。これを防ぐには、自分自身の技量と仕事に誇りを持っている業者を選ぶしかありません。これは会社全体の姿勢の問題ですので、不誠実な会社というのは見積もり段階で不誠実さが表に出てきてしまいます。見積もりやその説明、値段交渉の段階で下記のような対応が出てきた場合は要注意です。
激安の塗装見積もりを謳い、単価が「一式」と記載されている箇所が多い
足場工事の単価やシーリング工事(外壁材の隙間などをシーリング材で埋める作業)や、雨樋や破風などの付帯塗装の単価が「一式」と記載されています。
また、外壁塗装や屋根塗装などの、本来平方メートルを単位として記載しなければいけないものが「一式」と記載されています。
これは、調査段階で塗装が必要な箇所とその状況についてよく把握していれば出てこない記載です。素人によるいいかげんな現地調査と見積もり積算を行い、根拠の薄い激安価格を出して契約を取ってしまって、後は現場に丸投げして現場の「工夫」(往々にして手抜き工事と同義になる)によってコストを抑える、というような仕組みになっている可能性があります。
材料名や工程内容がしっかり記載されていない
商品名のみが記載されている場合が多いです。これもそのような表記になる裏側は上述の一式表記と同じで、あやふやな見積もりで安い価格をつけるだけつけて、後は現場に丸投げをするパターンの可能性があります。
この場合も、現場は与えられた金額(往々にして安すぎる)の中で「工夫」をしなければいけなくなっています。この場合の「工夫」というのが、塗装前の修繕を必要以上に少なくしたり、塗装回数を減らしたり、天候や気温的に塗装に向いていないときも工事を続行して塗料が乾燥していないことを無視したり、仕上がりチェックを甘くするといったことになってしまうことがありえます。
見積もり提示額からの値引率が15%以上
塗装工事の粗利益率はあまり高くなく、在庫のあるようなものでもないので、きちんとした見積もりを立てていれば本来それほど大きな値引きはできないものです。利益よりも売上や稼働率を優先し、自社の利益を削る形で値引きに応じることはありますが、それも限度があります。そのため15%以上などという割合での値引きに応じるということは、予め値引きできるように二重価格が設定されていた可能性があります。
「キャンペーン特別価格」「モニター価格」「◯◯イベント特別価格」
これらは即決営業の手法と考えられます。誠実に塗装工事をしようとすると、見積もりの段階でお客様の要望をよく聞き、周辺の環境を調べ、現地調査を行い、塗料や工法の選択に手間を掛けるべきなのですが、その手間を省きまずは契約を成立させてしまい、事前作業の不足から生じる後工程のトラブルに関しては逃げてしまおうと思っている可能性があります。
安すぎる価格
相見積もりを取ったときに極端に安い価格を提示している見積もりには注意すべきです。
塗装工事は塗料費と人件費から構成されており、本来あまり見積もり額に差が出ません。もちろん全く同じというわけではなくて、しっかりとした見積もりを出す業者同士の間でも見積り価格の違いはあります。それは、例えば築年数が経過して近い将来リフォームや建て替えが考えられる建物にどれくらいの耐用年数の塗料を使うべきかというライフサイクルについての考え方が違ったりするためで、それ自体は健全なことですし、業者は積算根拠について明瞭な説明ができるはずです。
そういった説明もなく、ただ極端に安いという場合は、必要な材料費や人件費を削っている可能性があります。
長すぎる品質保証
10年、15年、20年といった品質保証を謳っている場合は要注意です。おそらくそれはセールスのために過剰な表現をして目を引きつけているだけで、内容約款の中で数多くの免責事項があるでしょう。
なぜなら、塗料は塗装され乾燥・硬化した瞬間から皮膜の経年劣化が始まるのですが、その経年劣化の度合は建物ごとに違い、一律ではないからです。
塗装工事は人力で行うものであり、現場ごとの一点物でもあります。そのため施工ミスは誠実な塗装業者であっても起こりえます。むしろ誠実であるからこそ自社がミスをする可能性を認め、そのミスの結果が出てきて、それを修復するための手段として品質保証をつけています。塗装後どれくらいの期間でその結果が判明するかはそれぞれですが、少なくともそれは10年や15年といった時間ではありません。
長すぎる品質保証を謳う業者は、安心安全を前面に出してお客様を惹きつけておいて、実際に施工不良が発生したときには緻密に張り巡らされた免責事項を盾にして逃げしまう可能性が高いと考えられます。
塗装工事の見積書はどう読むべきか
施工工事の概要と、見積もりの根拠・数量が明確に記載されているかどうかをチェックします。そしてその概要や根拠に不明点があれば質問をしましょう。分かるまで説明をするのが業者の義務であり、また塗装業者にとってもお客様の希望や不安や懸念やニーズを聞き出すまたとない機会となります。不誠実な業者の戦略は「騙して、逃げる」ですので、その逆の業者の取る戦略は「お互いに納得し、長い関係を築く」です。ここで手間を惜しむ業者は誠実な業者とは言いかねるので、お客様としても業者を選ぶ良い判断材料となります。
その際、下記のようなポイントについて、自分自身が不安を感じていたり理解していないところがないかをチェックしながら、塗装業者に質問をして、判断をすると良いといえます。
- 施工する担当者は工事の内容をしっかり把握しているか?
- なにか困り事があったときに、誠実な対応をしてくれているか?
- 誰がどのように施工するのか?
- 工事中の注意する点はなにか?
- 工事代金の支払条件は何か?
- 品質保証の有無。